桑名のロッテリア

 〈京都からの鈍行帰京旅 その3

 亀山から名古屋行きの快速に乗り桑名で降りると、10月だというのに夏のような日差しが照りつけていた。養老鉄道で大垣に出る予定だが、乗り換えに時間があったので橋上駅舎を下りてみる。三岐鉄道北勢線の駅と、その手前に古びたバスセンターがあった。長島温泉行きのバスが出ているよう。

 その古びたバスセンターの並びに、これまた古びたロッテリアがあった。古びている、と感じたのはまずその看板。いまは、だいたいどこのロッテリアもロゴとともにローマ字で“LOTTERIA”と書かれているような気がするのだが、斜体カタカナで「ロッテリア」と書かれていたのだ。一昔前で時代が止まったままのバスセンターでは、チェーン店まで一昔前の装い…なのか。ちょっと雰囲気に惹かれて店に入る。

 妻はメロンフロート、僕はジンジャーエール。あと、ふたりで食べる用のポテトを頼んだ。入ったばかりと思しきバイトの店員さんは、メロンソーダと「ふるポテ」(フレーバー付きのポテト)のセットにして、メロンソーダにオプションで+50円のフロートを付けた方が安いですよ、と薦めてくれた。だけどポテトにフレーバーが付くとアレルギーがあって食べられなくて、そのことを伝えるとバイトの子は少し困った顔をして、奥にいた先輩の店員さんを呼びに行った。結局「ふるポテ」は通常のポテトにフレーバー粉末を付けるだけなので、セットにしてフレーバー無しにすれば注文通りでお安くできます、と先輩の店員さんは計算機で実際に計算もして見せてくれて、僕らは注文よりも数百円お得に注文できた。最初の店員さんは、そのことを説明するのに自分では納得してもらえないと思って先輩を呼びに行ってくれたんだな。困らせてしまってごめんね、と思う。

 お得になったからというよりは、ふたりの店員さんが一生懸命コミュニケーションをとろうとしてくれたから、このロッテリアに入ってよかった、と思った。無事に飲み物とポテトをゲットして、いつもよりちょっぴり大きめの声でお礼を言った。

 店内は外装に違わずなんだか古いカラオケ店のような雰囲気で、二階には勉強をする高校生やパソコンに向かうサラリーマンがぽつぽつ。のんびりした時間が流れる店内で喋りつつ、ふと時計をみると電車の時間まであと10分ちょっと。思っていたより時間が経っていてジンジャーエールを急いで飲み干そうとしたが、しかし携帯の時計を見ると、店の時計が5分ほど進んでいただけだった。

 なーんだ、と急ぐのをやめたら、結局電車の時間ギリギリになった。

 ふたりの店員さんに会釈をして店を出て、養老鉄道のホームに向かった。

(つづく)

斜体カタカナロッテリア

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